HOME>Repair Room>Repair "DENON TU-500"
"DENON TU-500 FM チューナー" の修理
ネットオークションにて落札、購入しました FM チューナーですが、「ジャンク品」ということであり、また45年前の製品ということでもあり、修理を試みること無くオブジョとして飾ってきました。
しかし最近になって、オープンリールデッキを入手し、その録音ソースとして FM 放送を加えたくなり、修理を試みることにしました。
メモ書きとなりますが、その修理の様子を記しておきます。
DENON デンオン FM ステレオチューナー TU-500
2019.7.10 にネットオークションで落札して、2019.7.13 に届けられました。落札金額は、4,989円(税込み)で、別途送料が、2,117円かかりました。
以下にオークションで掲載されていたときの写真をアップしておきます。
出品者からの情報です(掲載されたときのままを転記しています)。
【状態評価】※弊社基準を元にしております。 - 中古
【商品詳細】
・傷、汚れ、擦れがございます。
・ホコリ、黄ばみがございます。
・テープの貼り付けがございます。
・本商品はクリーニングを行っていない現状渡しの商品になります。ご理解頂きますようお願い致します。
・通電確認のみ確認しております。
・長時間継続しての動作確認は行っておりません。
※ 上記以外の詳細な動作確認は行っておりません。記載されていない部分に関しての動作については不明となっております。
その他機能について、動作不良がある可能性があること予めご了承頂いた上でのご入札のご検討をお願い致します。
※ 写真に写っているものが商品のセットの全てです。(撮影小物は除きます)
製品が届いてすぐに確認しましたが、そのときの状態を列記しておきます。
1. 外装には確かにホコリ、黄ばみ、傷、汚れ、擦れ等がありましたが、致命的なものはありませんでした。
2. ランプは、"STEREO" 以外は点灯しているようです。
3. FM 放送受信にて、"STEREO" 受信できませんでした。音声が "AUTO" でステレオにならず、"STEREO" ランプも点灯しませんでした。
4. "STEREO ONLY" にすると音声が切れたままとなります(無音となります)。当然、"STEREO" ランプも点灯しません。
5. "MUTING" ON にしても同様に無音となります。
6. "SIGNAL" メーター最大の時、 "TUNING" メーターがセンターにきていません(若干ずれているようです)。
7. 周波数表示が若干ずれているようです。
8. ヘッドフォンに接触不良、ボリュームにガリがあります。
分解、内部目視確認
分解する前に外装を清掃しておきます。とりあえずは、アルコールを含ませたウェットティッシュでフロントパネル、外装及びバックパネルを清掃しておきました。修理が完了すれば、つまみを外して本格的に清掃する予定です。
目立つような大きな傷もなく、けっこう綺麗になりました。テープの貼り付け跡はまだうっすらと残っていますが。
次にサービスマニュアルを参考にしながら、外装を外していきます。そして、内部の状況を確認します。
ウッドキャビネットを外して、上部からチューナー内部の様子を確認しました。
けっこうホコリが溜まっていますが、45年前の製品ということを考えると意外ときれいな状態でした。
修理・メンテナンス等のために分解、いじられた形跡はありませんでした。
基板上のコンデンサー、抵抗も大丈夫そうです。ただし、トランジスターの足は軒並み黒くなっており、その動作に不安がありますね。
次に底板を外して、下部から見たチューナー内部の様子を確認します。
4枚の基板が隙間なく並べられています。ハンダ面が見える基板の素子の状況は分かりませんが、ハンダクラック等は見られませんでした。
電源基板、FM MPX 回路基板(と思われる)2枚の基板上の素子の様子ですが、抵抗・コンデンサーとも見た目大丈夫そうです。ただし、ここでもトランジスター・IC ともリード線が黒くなっており、できれば交換したいところです。
"HITACHI HA1156W FM STEREO DEMODULATOR" IC 交換
ネットオークションで落札した IC "HITACHI HA1156W FM STEREO DEMODULATOR" が届きましたので、交換して様子を見ることにします。外装を外して基板を確認していたときに気になっていた IC です。
"MUA-001A FM MPX & AUDIO AMP UNIT" 基板を取り出して交換してみます。また、コネクタ近辺に基板の腐食のような汚れがありましたので、アルコール拭きしておきました。
コネクタには、接点復活剤を適量吹き付けて、余分なものはこれも拭き取っておきました。
そして、基板を元に戻して再度電源投入して確認です。
結果、「不具合改善せず」でした。"STEREO" にならない、"STEREO" ランプが点灯しないのは別の原因があるようです。残念。
"MUA-001A FM MPX & AUDIO AMP UNIT" 基板回路確認
泥縄式ですが、"HA1156W" が載っている "MUA-001A FM MPX & AUDIO AMP UNIT" 基板回路とその動作を回路図・実体配線図から確認してみます。
さて仕方がありませんので(おい)、泥縄式となりますが、まずは "MUA-001A FM MPX & AUDIO AMP UNIT" 基板の回路図から考察です。
"HA1156W" の "FUNCTIONAL BLOCK DIAGRAM" です。
次に "MUA-001A FM MPX & AUDIO AMP UNIT" 基板の INPUT/OUTPUT がどこにつながっているかを調べるためには、サービスマニュアルの実体配線図を見る必要があります。
"MUA-001A FM MPX & AUDIO AMP UNIT" 基板の INPUT/OUTPUT は、"CONNECTING BOARD" を介して "ETC-58A CONTROL UNIT (1)" と "ETC-58A CONTROL UNIT (2)" につながっているようです。
"ETC-58A" "ETC-59A" の回路図を示しています。これで、操作パネルから "MUA-001A" までの繋がりが分かりますね。
まぁ、繋がりが分かっても動作が理解できるとは限りませんが・・・(おい)。
トランジスター交換と発振器(19kHz)調整
劣化している(と思われる)トランジスターの交換用にぼちぼちと集めていましたトランジスターがある程度の数が揃いましたので、交換してみました。
全部で、16個のトランジスター交換となりました。
で、その結果ですが、「不具合改善せず」でした。"STEREO" にならない、"STEREO" ランプが点灯しないのは相変わらずです。
交換したトランジスターが原因ではなかったようです。やっぱり、信号を追って、理解しながら原因を特定していくしか方法が無いようです。
また、トランジスター交換後に、"MUA-001A FM MPX & AUDIO AMP UNIT" 基板の発振器の再調整をしておきました。
TP2 の発振周波数が 19kHz になるように VR1 により調整します。
一応、波形を観測しながら調整したのですが、知識不足からくる悲しさからか、これが正常な波形であるかどうかの判断ができません・・・。
FM 放送のパイロット信号が判別できれば、"STEREO" 判別できるとのことでしたので、期待したのですが、"STEREO" にはなりませんでした。
"HA1156W" への入力波形も FM 放送を受信しながら観測したのですが、よく分からず・・・。
もう少し、勉強する必要があるようです。
WIRING DAIAGRAM
"STEREO LAMP" と接続される回路を配線図から辿っています。
"IC301 HA-1156" 6pin が、"Stereo Indicator" 出力ですから、ここから関連あるところもまた配線を辿ることもしています。
"HA1156W" のデータシートから、
"Pilot Level for Lamp ON" のレベルが "L(on)" で、12 min. - 16 typ. - 20 max. [mV]
ですので、テスターを当てながら配線を辿っていきました。
1. "HA1156W - 6pin" 出力は、約6.9V(テスター計測)、"H" 出力で "Monaural"
2. "HA1156W - 6pin" 出力から "Stereo Indicator Lamp" まで、接触不良、断線の様子無し
3. "Function SW" MONO - AUTO - STEREO どのポジションでも 6.9V - 6.7V のまま
4. ヘッドホンでモニターしていても音声は、モノーラルのまま
当初は、このライン上で他回路からのショート、あるいは素子不良を疑いましたが、どうも "HA1156W" が、音声をモノーラル判定している可能性が大きくなりました。
また一番最初に、"HA1156W" の不良を疑いましたが、交換しても変わらなかったために "HA1156W" は、正常動作している(素子不良でない)と推測されます。
HA1156W CIRCUIT SCHEMATIC AND TYPICAL EXTERNAL PARTS
"HA1156W" の内部等価回路を上図に示します(データシートより)。
1. "HA1156W - 6pin" STEREO INDICATOR LAMP 出力はダーリントン接続のオープンコレクタで駆動されます。すなわち、モノーラル判定のとき、このラインは、Hi-imp になります。
2. "HA1156W 8pin - 9pin" この端子間をローパスフィルタ(コンデンサで結合)を通すことにより、音声の「ステレオ / モノーラル判定」しているようです。また、8pin を強制的に GND 接続にするとモノーラル判定確定となるようです。
"HA1156W" の 8pin - 9pin 間と周辺回路を左図のように抜き出してきています("MUA-001A FM MPX & AUDIO AMP UNIT" 基板回路より)。
"HA1156W" のデータシートでは、0.25μF でしたが、実際の TU-500 では、
C306: 0.22μF, ±5%, 50V: PLASTIC FILM CAPACITOR
が使われています。
また、"HA1156W 8pin" を制御するトランジスターが接続されています。
TR311: 2SC458C: Silicon NPN Epitaxial
従いまして次に TR311 の動作を考えてみます。
1. TR311 - Base には、NULL スイッチが関係しているようです。通常は、R307 を介して GND に接続されて、TR311 Collector はオープンであり、R308 を介して "HA1156W - 8pin" に接続される別途ラインに依って制御されるようです。
2. この(別途)ラインは、コネクタを介して、"FUNCTION SW" に接続され、MONO の場合は GND、AUTO - STEREO の場合はオープンになるようです。
以上より、今回の不具合の状況(STEREO にならない)から、このトランジスター(2SC458C)による制御が正常に行われずに、あるいはトランジスター不良のために、"HA1156W" が、モノーラル判定になっている可能性大です。
TR311: 2SC458C の交換
TR311 による回路の動作不良が疑われるため、まずは、トランジスターの動作不良が考えられます。また、外観を目視確認しますと確かにリード線は、黒くなってマイグレーションが進んでいるようですが、極端に黒ずんでいるようには見受けられません。
そこで、TR311(2SC458C)を取り出して、E - C - B 間の抵抗をテスターで計測してみました。
1. E - C 間: 70Ω、2. E - B 間: 70Ω
正常な NPN-Transistor ですと、上記1. 、2. は、ほぼオープン状態になるはずですので、TR311(2SC458C)は、破損しているようです(素子不良の確定です)。
そこで、新しい 2SC458C と交換してみました。上右写真は、トランジスター(2SC458C)交換後の様子を表したものです。
そして、FM アンテナ入力を接続して、電源投入後、FM 放送受信して動作確認してみますと、STEREO 受信して(STEREO Lamp 点灯)、ヘッドホンでのモニターでも STEREO になりました。
上写真は、FM 放送受信して、STEREO Indicator Lamp が点灯(赤色)している様子を示しています。
ただし、Function SW - AUTO で、MUTING ON にすると、音声がミュートされてしまいます。
Function SW - STEREO ONLY にすると、MUTING ON でも FM ステレオ受信して局間はミュートします(正常動作)。
上記、軽微な不具合はありますが、とりあえずは正常に受信されるようになりましたので、このまま様子を見たいと思います。