HOME>Repair Room>Repair "TEAC X-10"
"TEAC X-10 1/4 Track 2-Channel Stereo Tape Recorder" の修理
ネットオークションにて落札、購入しましたオープンリールデッキです。出品者によるタイトルでは、「TEAC ティアック オープンリールデッキ X-10 取扱説明書付 通電しました」とういものでした。
"TEAC X-10RBL" が故障して使えなくなっていたときにバックアップ用にと購入しました。
"TEAC X-10 1/4 Track 2-Channel Stereo Tape Recorder"
ネットオークションで落札して、2019.6.5 に届けられました。落札価格は、27,529円で、送料が、1,996円かかりました。"TEAC X-10RBL" が、26,000円でしたので、ちょっと割高に落札してしまいましたね。
オークションで出品、掲載されていたときの写真をアップしておきます。
また出品されていた時の情報として、出品者より以下のコメントがありました。
【仕様】
電源 : 100V AC,50/60Hz
消費電力 : 70W
外形寸法 : 432(幅)×452(高さ)×262(奥行)mm
重量 : 20kg
「修理明細書にて、
[ご指摘詳細] 再生せず。Pローラーが作動せず。(ローラ古い)
と、修理依頼をし、
[2012/06/15 処理内容]
パネル脱着を含む、メカ部分解・清掃・部品交換・清掃・ヘッド研磨のオーバーホールを行いました。
との回答あり。
中古品の為、小キズなどはありますが、目立つようなキズやサビは確認できませんでした。
通電のみ確認致しました。他は未チェックになります。」
それで、送られてきた "TEAC X-10" の状態ですが、通電して簡易確認したところ、
1. モーターは回転動作しているようです。キャプスタン軸も回転していることが確認できました。
2. ピンチローラー軸は固着しており、キャプスタン軸に圧接することができませんでした。
3. FF / PLAY にてリール台は回転しますが、STOP キーを押しても止まりませんでした(仕様?)。
4. 外観ですが、全体的に退色が進んでおり、特に VU メータの赤色が(L / R とも)退色して消えかかっていました。
分解、ピンチローラー軸固着解除
メカ的な構造・機構は、ほぼ "X-10R" と同じです。"X-10R" と同じように分解していきます。
ピンチローラー駆動部にアクセスするためにフロントパネル(上部)を外します。
ヘッドカバーとピンチローラーを外してみましたが、ピンチローラー機構にアクセスするにはフロントパネルを取り外さないといけませんね。
フロントパネルを取り外してピンチローラー機構に露わにして、動かそうと手で操作しましたが、ガッチリと固着しており、ビクともしませんでした(写真右側は、"X-10R" です)。
そこで、"X-10R" のときと同様に、潤滑油をピンチローラー機構のありとあらゆる接点に吹き付け、摺動を(力ずくで)繰り返して復活させることがでました。実際には、30分くらい手で少しずつ動かして、繰り返すと徐々に滑らかに動くようになってきました(けっこう重労働)。
音声出力確認
機構部が動作するようになりましたので、実際にテープをセットして再生してみましたが、出力 VR を最大に回しても、どうも左側の音声が出力されていないようでした(ヘッドフォン出力、LINE 出力とも)。右側の音声は出力されていました。
そこで、"WaveGene" で、400Hz / -12dB のサイン波を発生させることにして、それをデッキに入力して、出力される様子を観察することにしました。
まずは、左側の写真にある測定器で、400Hz / -12dB のサイン波が出力されるように "WaveGene" からの出力を確認しておきます(L / R 共)。
次に、"WaveGene" の出力を、デッキの入力端子に繋ぎ、デッキの出力端子を測定器に接続して、観測します。このとき、"MIC"、"LINE"、"OUTPUT" の各ボリウムは最小にまで絞っておきます。
更にデッキ側の設定としては、"MONITOR" スイッチを "SOURCE" にしておき、"LINE" ボリウムを L / R ともに 0VU になるまで上げておきます。というか、上げることができました。
次に、"OUTPUT" ボリウムを上げていって、その出力波形(LINE 出力です)を観察してみました。
デッキの出力結果を写真で示します。上左側が "LEFT"、上右側が "RIGHT" 出力です。
"OUTPUT" ボリウムの位置は、L / R ともに同じですが、"RIGHT" 側を -12dBm に合わせた出力にしたときの "LEFT" 側出力が極端に低く(小さく)なっていることが見て取れます。
回路確認
不具合(左側音声出力しない)が発生している部位を回路図から検討します。
上図は、"MONITOR" スイッチ後の "LEFT" 側の回路図です。
症状から類推するとまず最初にアンプの誤動作が疑われますが、まずは基板を目視で確認してみます。
目視確認で、U301 - HA11122W の全端子が黒く変色していましたので(IC の故障が疑われるために)、取り外して、X-10R 用の予備基板の HA11122W と交換してみました。
左の写真は、取り外した HA11122W です。
そして、交換後、音出ししてみましたが、結果変わらず。
HA11122W の不良ではないようです。残念。
仕方がありませんので(おい)、不具合の発生している部位を中心にその波形を追っかけてみます。
まず最初に出力波形の確認をしておきます。
ch1: "Right" LINE 出力
ch2: "Left" LINE 出力
"Left" 出力が明らかに低い(小さい)ことが分かります。
次に、ch1 はそのまま "Right" LINE 出力にして、ch2 を上記①~⑥までの波形を確認していきます。
ただし、①~⑤の信号波形は、"Right" 側の波形を見た後、"Left" 側の波形を観測して、その差異があるかどうかを確認することにしています。
※ 記録としては、"Left" 側の波形のみ残してあります。
また、プローブ設定として、①~④までは DC 入力設定、⑤、⑥は AC 入力設定としています。
波形観測から、特に④と⑥との比較から、入力波形の振幅が "Left" 側が小さく、U301(HA11122W)- 2P の入力までで不具合が発生しているようです。
以上の波形観測により、不具合が生じている素子は、コンデンサ(C383)か半固定抵抗器(R403)の可能性が高くなります。
そこで、R403 を取り外して、端子間の抵抗値を測定してみました。
① - ③: 700Ω
②を③側に max
① - ②: 700Ω
②を①側に min
① - ②: 300Ω
となり、まるっきりでたらめな値を示していました。半固定抵抗器の不良確定です。
HA11122W と同様に R403 を取り外して、X-10R 用の予備基板から同じ半固定抵抗器と取り替えて、"Left LINE OUTPUT" が、"Right LINE OUTPUT" と同じになるようになるか調整してみました。
結果、不具合が解消され、"Left" 側からも "Right" 側と同様に出音されるようになりました。
再生・出音確認
再生・出音確認する前に各ヘッドの清掃を行います。段差はありませんでしたが、表面がやや曇っているようでしたので、マイクロコンパウンドで軽く研磨しておきました。また一部写真には写っていませんが、キャプスタン軸、テープガイド等も汚れを落として、軽く研磨しておきました。
そして、長らく使用されていませんでした(と思われます)ので、各ヘッドを消磁器で消磁しておきました。
出音確認には、"STEREO CHECK TAPE 4 TRACK STEREO 19cm/s ATD-1010 TEAC CLUB" を利用して出音レベルが調整できるかで、確認します(「2. 400Hz 0dB の再生基準レベルセット信号」を利用します)。
■ STEREO CHECK TAPE 4 TRACK STEREO 19cm/s ATD-1010 TEAC CLUB
【 SIDE 1 】 | 【 SIDE 2 】 |
1. 左右・中央の確認 | 1. リバース クロストーク チェック |
2. 400Hz 0dB の再生基準レベルセット信号 | 2. 3. 4. 5. テスト音楽 |
3. 7,000Hz -10dB の再生ヘッド角度チェック信号 | |
4. 位相チェック | |
5. ワウ・フラッターチェック | |
6. テスト音楽 |
一応これで、出音確認はできたと思います。